ビタミンCとの付き合い方|自分に合った量を見つけるという選択肢

毎朝スプーン1杯のビタミンCを飲んでいた頃の話

冬場、粉末のビタミンCをスプーン1杯、お湯に溶かして飲んでいました。

「1日2000mg飲め」というネット記事をそのまま信じて。

ビタミンCは水溶性だから飲みすぎても排出されるだけ、多いほうが安心——そんな理屈で毎朝続けていました。

2週間ほど経った頃、お腹がゆるくなりました。

最初は食あたりかと思いました。

でもビタミンCを減らしたら、すぐ治った。

あのとき「体が要らないって言ってるんだな」と感じました。

量を増やせば効くと思い込んでいた自分に、体が先にブレーキをかけてくれた格好です。

「たくさん飲めば効く」はどこから来たのか

ビタミンCの大量摂取が広まったのには、明確なきっかけがあります。

ノーベル賞学者の影響力と、その後の検証

1970年、ノーベル化学賞・平和賞の二冠を持つライナス・ポーリングが「ビタミンCを1日3g以上摂れば風邪を予防できる」と主張しました。

彼自身、最大で1日18gを摂取していたと言われています。

ノーベル賞学者の発言です。影響力は大きかった。

ただ、その後の大規模な研究では、話が変わってきます。

11,000人以上を対象にした29件のランダム化比較試験のメタ分析では、ビタミンCの定期摂取によって一般集団の風邪の発症率が下がるとは言えないという結果が報告されています(Hemila & Chalker, Cochrane Review, 2013)。

風邪の持続期間については、成人で約8%の短縮が見られたものの、「飲めば風邪にならない」というイメージとはかなり距離があります。

正直、これを知ったときは驚きました。

「あんなに飲んでいたのは何だったんだ」と。

水溶性ビタミンの吸収には上限がある

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

200mgと1000mgで吸収率はどう変わるか

ビタミンCの吸収率は摂取量によって変わります。

200mg以下ではほぼ100%吸収されますが、1000mgを超えると50%以下に低下することが薬物動態研究で示されています(Levine et al., PNAS, 1996)。

つまり、1000mg飲んでも体が使えるのは半分以下。

残りは素通りしています。

これはタンパク質は「量」より「吸収タイミング」で触れた吸収の話と似ていて、栄養素は「たくさん入れればたくさん使われる」わけではありません。

腸管のトランスポーター(SVCT1)には処理能力の上限があり、それを超えた分は吸収されずに通過します。

余った分はどこへ行くのか

吸収されなかったビタミンCは尿として排出されます。

100mg以下の摂取では尿中排泄はほとんど認められませんが、100mgを超えると排泄が始まり、量が増えるほど「飲んでも出るだけ」の割合が大きくなります。

大量摂取でお腹がゆるくなるのは、吸収しきれなかったビタミンCが腸内で水分を引き込むためと考えられています。

体が出すサインとしては、これ以上ないくらいわかりやすい。

量を減らしても、体調は変わらなかった

毎朝2000mgだったビタミンCを、食事からの摂取をベースに切り替えました。

減らすときは不安でした。

風邪をひきやすくなるんじゃないか、免疫が落ちるんじゃないかと。

でも、1ヶ月経っても体調は変わらなかった。

むしろお腹の調子がよくなった分、快適になりました。

変わらなかった。それだけのことです。

でも「変わらなかった」という事実は、「その量は体が必要としていなかった」というシンプルな答えでもあります。

以前サプリに疲れたあなたへ|「正しい使い方」を手放していい理由で書いたように、サプリとの距離感は人それぞれです。量を減らすことが正解なのではなく、自分の体がどう反応するかを確認してみること自体に価値があります。

自分に合った量を見つけるという選択肢

「全部やめる」か「全部続ける」か。その二択じゃなくてもいい。

食事からどのくらい摂れているか、1日だけ確認してみる

厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)では、成人のビタミンC推奨量は100mg/日です。

日本人の平均摂取量は93.5mg/日(令和元年国民健康・栄養調査)で、わずかに足りていません。

ただ、100mgという量は意外と手が届きます。

赤ピーマン半分で約100mg。

キウイ1個でも約70mg。

ブロッコリー1/3株で50mg。

ぶっちゃけ、野菜と果物を普通に食べていれば、そこまで足りなくならない量です。

1日だけでいいので、自分が何を食べたかメモしてみてください。

水分補給を自分の体に合わせるでも触れましたが、数字を「ノルマ」にするのではなく、自分の今の立ち位置を知るための材料として使う。

カロリー計算をやめたい人へ|数字と「対話する」食事という選択肢と同じ発想です。

足りないときだけサプリで補うという考え方

サプリを全否定する必要はありません。

食事が偏りがちな時期、忙しくて野菜を摂れない日、そういうときにサプリで200mg程度を補う——そんな使い方もあります。

大事なのは「毎日1000mg」をノルマにすることではなく、足りないときに足す、という柔軟さです。

まとめ:体の声を聞いてから量を決める

ビタミンCは大切な栄養素です。

それは間違いない。

ただ、「たくさん飲めばたくさん効く」は、水溶性ビタミンの仕組み上、成り立ちません。

吸収には上限があり、超えた分は体を素通りしていきます。

量で安心を買っていた頃の自分を振り返ると、あれは「健康を自分でコントロールしたい」という気持ちの表れだったのだと思います。

でも本当に必要だったのは、正しい量の情報ではなく、量に頼らなくても大丈夫という自信のほうでした。

今飲んでいるビタミンCの量を、一度確認してみてください。

そして1週間だけ、量を半分にして体調を観察してみる。

変わらなかったとしたら——それが体の答えです。

健康診断の数値に振り回されないためにでも書いたように、数値は自分を裁くためではなく、対話するためにあります。

参考になれば幸いです。

免責事項:
この記事は個人の経験と考え方を共有するものであり、医療アドバイスではありません。健康についての判断は、ご自身の体調を観察したうえで、必要に応じて医師にご相談ください。

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