マグネシウム不足かも?|なんとなくの不調と見落としがちな栄養素

「加齢かな」で片付けていた不調

最近、夜中に足がつるようになった。朝起きても疲れが残っている。

寝つきが悪くて、気づいたらスマホをだらだら見ている。

健康診断では特に異常なし。

「加齢かな」で片付けて、もう半年くらい経つ。

ある日、同僚がこんなことを言いました。

「それ、マグネシウム不足かもよ」。

マグネシウム? 鉄やカルシウムは知っている。

でもマグネシウムと言われても、正直なにも浮かんでこない。

調べてみると、このミネラルは体の中で驚くほど多くの仕事をしていることがわかりました。

この記事では、マグネシウムの役割と不足しがちな理由を整理しながら、食事で意識してみるきっかけをお伝えします。

マグネシウムの基礎──静かだけど重要な裏方

マグネシウムは、体内で600以上の酵素反応に関与しているとされています。

600以上。

具体的には、エネルギーを生み出すATP(アデノシン三リン酸)の代謝、筋肉の収縮と弛緩、神経伝達、タンパク質合成、さらには骨の形成にまで関わっています。

細胞内で2番目に多いミネラル(カチオン)であり、体のあらゆる場所で裏方として働いている存在です。

なかでも注目したいのは、神経系との関係です。

マグネシウムは神経の興奮を抑える方向に作用するとされています。

GABA受容体に関与し、抑制性の神経伝達を促進する。簡単に言えば、体を「落ち着かせる側」に寄与しているミネラルです。

鉄分のバランスについて先日書きましたが、鉄が「酸素を運ぶ」というわかりやすい役割を持っているのに対し、マグネシウムの仕事は裏方すぎて見えにくい。

だからこそ、不足しても気づきにくいのです。

なぜ不足しがちなのか

日本人のマグネシウム1日平均摂取量は247mg。

一方、食事摂取基準(2025年版)の推奨量は、30〜49歳男性で380mg、同年代女性で290mgです。

差は約100mg。

推奨量に達していない人が多い状況が続いています。

これは日本だけの話ではありません。

2025年のレビュー論文によると、世界人口の約31%(推定24億人)がマグネシウム推奨摂取量を満たしていないとされています。

なぜこれほど不足するのか。

いくつかの構造的な理由があります。

精製穀物でマグネシウムが大幅に減る。

玄米を白米にする精製過程で、マグネシウム含有量は約80%失われるとされています。

精製小麦も同様です。日本人の主食が白米と精製パンである以上、この影響は大きい。

加工食品にはマグネシウムが少ない。

コンビニ弁当、カップ麺、冷凍食品──忙しい日常で頼りがちな加工食品は、マグネシウムの含有量が低い傾向にあります。

ストレスと利尿作用のある飲料。

ストレス下ではマグネシウムの尿中排泄が増えるという報告があります。

さらに、コーヒーやアルコールの利尿作用もマグネシウムの排出を促す要因になります。

デスクワーク中心、コーヒー多飲、コンビニ飯。思い当たる節がある人は少なくないのではないでしょうか。

不足のサイン──体が出すヒント

マグネシウムが不足すると、どんなサインが出るのか。

よく挙げられるのはこのあたりです。

  • 筋肉のけいれん(足がつる、まぶたがピクピクする)
  • 疲れやすさ、だるさ
  • 寝つきの悪さ、睡眠の浅さ
  • イライラ、気分の落ち込み

ただし、正直に書いておく必要があります。

「足がつる=マグネシウム不足」とは言い切れません。

2021年のCochraneレビューでは、マグネシウムサプリメントは一般成人の特発性筋けいれんに対して有効とは言えないと結論づけています。

筋けいれんの原因は脱水、電解質バランス、筋疲労など複数あり、マグネシウムだけで説明できるものではありません。

睡眠への効果も、2024年のシステマティックレビューでは「穏やかなポジティブ効果の傾向がある」とされていますが、確固たる結論には至っていません。

つまり、「マグネシウムを摂ればすべて解決」とはならない。

ただ、不足しがちなミネラルであることは事実で、食事から意識してみる価値はあると考えています。

食事から意識してみる

マグネシウムは、サプリよりも食事から摂ることをまず意識したいところです。

食事からの摂取で過剰症が起きることはほぼないとされており、安心して取り入れられます。

マグネシウムを多く含む食品

食品100gあたりのMg取り入れ方
アーモンド約270mg間食に10粒(30g)で約80mg
豆腐(木綿)約130mg味噌汁の具に
わかめ(乾燥)約1100mg味噌汁、サラダに少量
玄米約110mg白米から切り替え(精製で80%減)
ほうれん草約69mgおひたし、ソテーに
バナナ約32mg朝食やおやつに

面白い豆知識を一つ。

緑色の野菜にマグネシウムが含まれているのは、葉緑素(クロロフィル)の中心原子がマグネシウムだからです。

「緑が濃い=マグネシウムが多い」と覚えておくと、選ぶときの目安になります。

日常で取り入れるヒント

特別なことをする必要はありません。

  • 味噌汁にわかめと豆腐を入れる → それだけでマグネシウム補給
  • 間食をスナック菓子からナッツに変える → アーモンド10粒で約80mg
  • 白米を玄米や雑穀米に → マグネシウム含有量が数倍に
  • 入浴時にエプソムソルト(硫酸マグネシウム)→ 経皮吸収のエビデンスは限定的だが、リラックス効果はある

ぶっちゃけ、味噌汁をちゃんと飲んでいれば、かなりカバーできます。

日本の伝統的な食事には、意外とマグネシウムが豊富に含まれているのです。

睡眠とデータの関係について書いた記事でも触れましたが、体調は一つの栄養素だけで決まるものではありません。

ただ、意識するポイントを一つ増やすだけで、食事の選び方が少し変わることがあります。

まとめ:まずは1週間、意識してみる

マグネシウムは、体の中で最も地味だけど最も忙しいミネラルかもしれません。

600以上の酵素反応に関わりながら、鉄やカルシウムほど注目されない。

推奨量に達していない人が多いのに、健康診断の項目にも入っていない。

まさに「見落としがちな栄養素」です。

劇的な変化を期待する必要はありません。

まずは1週間、食事にナッツを足してみる、味噌汁をちゃんと飲んでみる、白米を玄米にしてみる──その程度でいい。

変化があるかどうかは、自分の体が教えてくれます。

サプリとの付き合い方でも書きましたが、「完璧に栄養を摂ろう」と思う必要はありません。

「まだ足りない」から降りることも大事。

ちょっと意識してみる、くらいがちょうどいいのだと思います。

免責事項:
この記事は個人の経験と考え方を共有するものであり、医療アドバイスではありません。
健康診断の結果について気になることがある場合は、医師にご相談ください。

参考リンク